任天堂がポケットペアをぶん殴るために用意した“パテントウェポン”を推測する 【#ポケモン #パルワールド】

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任天堂、ついにポケットペアへ宣戦布告

9月19日、任天堂は株式会社ポケモンと共同で、「PALWORLD(パルワールド)」等を運営する株式会社ポケットペアに対して、自社の特許権が侵害されたとして訴訟を提起する旨のニュースリリースを発表しました。

任天堂株式会社 ニュースリリース :2024年9月19日 - 株式会社ポケットペアに対する特許権侵害訴訟の提起について|任天堂
任天堂株式会社のニュースリリースです。

特許権? 著作権ではなく?

僕は最初、「うぇ~ついに最強の任天堂知財部が動き出したのかぁ」とか呑気に思いながらリリースとゲームメディアの関連報道をチラチラ見ていたのですが、そこで一つ引っかかることがありました。

それは、訴訟提起の理由が特許権の侵害であったことです。

「PALWORLD」のリリース当初、Web界隈でももっともやり玉に挙げられていたのは、ゲーム中に登場するキャラクター“パル”のデザインが、これまでの「ポケモン」シリーズに登場するポケモンたちのそれと類似しているのではないか、ということでした。

ただこれに関してはポケットペアもさるもので、リリース当初には「著作権に関しては弁護士と共同で調整を重ねており、問題がないことを確認している」旨をメディアに語っていました(すいません、国内ゲーム系Webメディアのどこかがそういった内容の記事を掲載していたはずなのですがソースが見つからず……)。

また専門家からもストレートに著作権侵害に当たるかは微妙なところという見解が出されていたりと、何か世間様(というかポケモンファン)からは許されてはいないけど、積極的にあれやこれやとも言えないという小康状態ではありました。

そこへ今回の訴訟提起ということで、てっきりそっち方面でのバトルかと思いきや、まさかの特許権侵害という変化球。任天堂側もそれでは分が悪いと踏んだんでしょうか。

ポケモン(と任天堂)が保有している特許を調べてみよう

しかし、そうなると今回ポケモンと任天堂がどの特許をポケットペアに侵害されたとみなしているのが気になるところです。

「PALWORLD」は“パル”のデザインこそ確かにポケモン風味ではあるものの、ゲームシステム的には“パル”をコンパニオンとして使用できるTPS型の戦闘に、オープンワールド、拠点構築、狩猟/農耕、プレイヤーキャラのバイタル管理といったサバイバル要素をプラスしたような形となっています。

日本製ゲームのある種の王道である、コマンド選択型RPGの「ポケモン」シリーズとの共通点は、あまり見出せません。オープンワールドといえば直近の「ポケットモンスター バイオレット/スカーレット」や「Pokémon LEGENDS アルセウス」といったタイトルが思い浮かびますが、類似していると強いて言うならばその点くらいでしょうか。

そうなると、かつての「白猫プロジェクト」の“ぷにコン”訴訟の時のように、ゲーム内の、なにがしかのメカニクスに関連した内容になるのかもしれません。

ちょっと気になったので、素人なりに調べてみることに。調査にあたって、独立行政法人 工業所有権情報・研修館が運営している特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」を使ってみました。

j-platpat

当初は「任天堂」をキーワードにして検索を行いましたが3,000件以上のヒットがあったため、今度は「ポケモン」で検索を実施。実際に特許権が与えられているものから申請前・審査中、拒否・取り下げなどが行われたものを含め、全275件が引っかかりました。

株式会社ポケモンが保有/申請している特許はざっくり275件

この中から更に、出願者がポケモンであり、かつ特許の出願分類(FI)がビデオゲーム総合系の“A63F13/00”となっている、特許がすでに有効なものに絞って検索したところ、135件まで絞り込めました。

さらに念のため、出願者を任天堂とした以外はほぼ同条件の検索も別にかけていますが、件数が膨大なので2015年以降に有効となった特許に的を絞っています。

あとは“発明の名称”からそれっぽそうなのをつまんで見ていくだけです。その中で個人的に気になった、ふたつの特許を以下に挙げます。

なお、実際任天堂/ポケモンがどのような特許を侵害されたかに関しては現在明らかにしていないため、あくまでも特許申請の仕組みや関連法規等に詳しくないド素人の個人的感想と予測に過ぎないことは最初にお断りしておきます。

特許7545191 – 公知日の新しい順に上から見ていって、ふたつ目でいきなりそれらしいのが見つかりました。内容をぱっと見た感じでは「Pokémon LEGENDS アルセウス」のポケモン捕獲に関するシステムの特許とみられますが、「PALWORLD」におけるパルの捕獲も“パルスフィア”というアイテムを対象に直接投擲し、その後確率で成功判定が行われるというものになっています。出願日が令和6年7月30日と、ソフトの発売から1年半ほど経ってからというのがなんとも意味深です。まあ特許の申請ってそんなものなのかもしれませんが……。

特許7397237 – こちらは「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」に登場する“ゾナウギア”のクラフティングに関するものと思しき特許。「PALWORLD」には恐らく直接関係ありませんが、無理やり結びつけるなら拠点のオブジェクトをクラフトする際の、各オブジェクト同士の接着する挙動とかあたりになるんでしょうか。

今回の騒動の個人的感想――任天堂もポケットペアも“やりすぎ”では

さて、最後に今回の訴訟騒ぎに関する個人的な感想を述べておきます。

まず、今回任天堂/ポケモンが取得している特許を調べるにあたり、申請中や却下されたものまで含めると何千という件数が存在することには改めて驚きました。

そしてこのような巨大デベロッパーがゲーム開発における特許を大量保有している中、こういった内容を精査するリソースの乏しい小規模なインディーデベロッパーにとっては、下手をすれば常に訴訟されるリスクを抱えながらのゲーム開発を行わざるを得ないのだという、少々厳しい現実を目の当たりにした感じがしました。

それを考えると正直、今回の任天堂の、自社のIPに類似した製品を法の力で押さえつけるかのようなパテントトロールめいた訴訟提起には疑問を投げかけざるを得ません。僕としては過去のコロプラに関する訴訟も、特段『白猫~』のユーザーではなかったとはいえ、重箱の隅を楊枝でほじくるような、過剰な反応ではないだろうかと考えたことを思い出します。

しかしそれは、ポケットペア側の「PALWORLD」に関する一連の大きな動き――リリース当初の予想外ともいえる売れ行きの良さに加え、直接の関連はないとはいえ任天堂にとってのライバルハード「PlayStation」を抱えるソニー系列の企業であるSME・アニプレックスとのジョイントベンチャー設立による性急なIP拡大の動きなどに触発された面も大きいように思われます。

またポケットペアのゲーム開発においては「ヒット作の良いところをつまんでくっつければ面白いゲームが作れる」というスタンスが露骨であり、それがある種、引用元となったタイトルへのリスペクトを欠いているように見えてしまう部分も、今回の騒動が起こった一端を担っているのではないでしょうか。

どちらも営利企業であるため、自身の利益を優先するのは当然と言えばその通りなのですが、もう少し穏便に、それぞれ共存出来得るルートもあったのではないか、といちゲーマーとして思う今日この頃です。皆さんはいかがお考えでしょうか?

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